当院の入れ歯治療の方針
入れ歯が完成し、初めて患者さんのお口に入れる時、私たちも少し緊張しています。
「ぴったりです!」という反応が返ってくるのが理想ですが、異物を口の中に入れるわけですから、実は多くの場合、多少の違和感が生じます。ただそれも、平均2~3回調整すれば改善・解消します。
もし1カ月が経過しても違和感が残るという場合には、設計、材料、根本的なかみ合わせに問題がないかを考え、適切に対応させていただきます。
入れ歯の設計について
奥歯が2本欠損している場合
図Aのように上顎の左上奥歯2本を失った場合、通常は図Bの入れ歯を設計します。しかし、嘔吐反射が起こる・舌が回らない・発音に支障があるといった場合には、図Cの設計へと変更します。片側だけで作ることで、上記の症状がずいぶん抑えられます。ただ、慣れると図Bの方がしっかりと食事ができるため、判断には慎重を要します。
入れ歯でもっとも大切なのが「動かないこと」です。浮いたりズレたりすると、擦れて痛みが出ます。また、金属のバネがかかる歯を揺り動かし、その歯の寿命を短くしてしまいます。
「動かないこと」を考えると、薄くたわまない金属材料が理想と言えます。
上顎の前歯6本だけ残り、
奥歯がすべて欠損している
場合
図Dは、前歯6本だけが残った上顎です。この場合、下の図Eのような設計にすると、入れ歯がぴったり吸着し、しっかり噛めることが予想できます。
入れ歯を使い慣れている人であればこれで良いのですが、入れ歯が初めてという方の場合、異物感が強くなることがあります。
こういった場合、下の図Fの設計を検討します。金属面積が減り、舌の先を前歯の裏側に当てられるため、発音(タ行など)がしやすくなることが期待できます。
ただ、図Fの入れ歯だと、えづきやすいということがあります。その場合、下の図Gを検討します。発音時には舌の先が金属部分にあたりますが、えづきが起こりにくくなります。
このように、同じ歯の欠損であっても、入れ歯の設計にはさまざまなパターンが考えられます。口・舌の動かし方、また異物感には個人差があるため、「どの入れ歯が一番良い」とは言い切れません。
当院では、体験用の仮の入れ歯の床をお作りし(1つ3,300円)、1週間ほど試用していただいた上で、最終的な設計を決めるということが可能です。
バネのまわりや、入れ歯の内側に食べかすが
よく詰まる場合
下の図Hは、金属のバネと残存歯のあいだに隙間がある状態を表しています。この場合、隙間には食べかすが頻繁に挟まります。食べかすが気になるかどうかは人によって異なりますが、気になる場合には図Iのように、隙間を解消する必要があります。