開院してから20数年、大学時代から入れ歯作りが好きで楽しくて、さまざまな先生のもとで、勉強してきました。
勉強すればするほど、奥深い “入れ歯” の世界にどっぷりつかり、最近は、作るのが “難しい患者さん” に出会うと逆にうれしくかんじるほどです。
入れ歯をうまくつくれると、患者さんは、食事がしっかりできて、おいしく感じ顎関節のゆがみがなくなり、肩こりや頭痛がおさまり、立った姿勢までよくなります。
良い入れ歯をつくるためには、いろいろな条件をそろえなければなりません。ただ、抜けたところの歯型をとって、つくっても、痛くて入れてられない入れ歯ができるだけなのです。
「設計」と「入れ歯の材料」と「かみあわせ」。これは患者さんに満足してもらうための条件です。
昔は良かれと思って、できるだけ今残っている歯を削ったりせずにそのままにして、苦労しながら、ワイヤーのかける位置を決め、上下の人工歯の当たり方をみながら、調整を重ねてなんとか慣れてもらおうとしていました。
今残っている歯...それが大問題で、歯並びが悪いままの歯の横に、いくらきれいな人工歯をならべても、かみあわせがガタガタだと、食事をするたびに残っている歯をぐらぐらゆらして、あるいは、食べ物が詰まってしまって、入れ歯が吸着せずにすれて痛みだします。
今から考えると、20数年前の私の作った患者さんの入れ歯と、今作っている入れ歯では考え方や、かみ合わせの決め方が全然違います。
そして、もうひとつ大事なのは、理想の入れ歯の条件は、うすくてゆがまないこと。
顎の力は、非常にかみ合わせの力があるのは周知だとおもいます。
夜寝ている間の歯ぎしりで、歯がゆるんでくる人も非常に多く、2か月に1度クリーニングにきていただいているのに、ぐらぐらしてくる患者さんもおられます。
噛む力がつよいのに、入れ歯の材料がプラスチックでは、割れなくても噛むたびにひずんでいるのです。
ひずむと、入れ歯を押し下げ、歯茎に負担がきて、痛む場所がでてくるのです。
抜けている空間は、ただ歯がないだけでなく、顎骨も多かれ少なかれ吸収していて、抜いた時期や抜いた歯の種類によって、顎骨の厚みもちがうのです。
プラスチックの入れ歯がひずむと、ワイヤーをかけている歯をひっぱります。
かむたびに、歯をゆがめているので、“長期的抜歯装置” になっています。
残っている歯を大事に残す、そのためには材料もとても重要な要素なのです。
しが歯科医院
院長 志賀 淳